まずはじめに
この体験談について
それまで当たり前だと思っていた日常が、
心の不調をきっかけに、大きく揺らぐことになりました。
これは、立ち止まることになるまでの過程を、
当時の記憶や感覚をたどりながら綴った体験談です。
いくつかの記事に分けて、お話しできればと思っています。
心の疲れを感じるあなたへ
- 自分や身近な人の心の不調が気になっている方
- 仕事や人間関係の中で、どこかしんどさを抱えながら日々を過ごしている方
ここでは、正解や答えを示すわけではありません。
ただ、読み進める中で、
「ひとりじゃなかった」と感じるきっかけや、
立ち止まって自分を見つめる時間が生まれたらいいなと思っています。
途中から読んでも大丈夫です。
しんどいときは、そっと閉じてくださいね。
語り手について
いまの私
過去にうつ病の診断を受け、しばらく療養していましたが、
現在は症状が落ち着き、数年が経っています。
いまの私は、当時フタをしていた自分のしんどさを、
あの頃よりも落ち着いた気持ちで振り返られるようになりました。
今回は、うつ病の診断を受けた後の、
”当たり前”だった日常が、遠く感じた日々をお話しできればと思います。

”当たり前”だった日常が、遠く感じた日々
「普通に起きて、身支度をして、外に出る」
それは、特別なことでも、頑張ることでもなく、
ただの“日常”で、”当たり前”にできていたことでした。
しかし、うつ病の診断を受けてからというもの、
その“当たり前”が、急に遠く感じられるようになりました。
どうしてあんなにも遠く感じていたのか。
身体と心、それぞれの視点から
振り返ってみたいと思います。
身体の状態① 起きられない、動けない
仕事をしている頃から、
朝、起きづらくなっている感覚はありました。
それでもなんとか起きて、支度をして、出勤していたのですが——
「起きなくてもいい朝」を迎えた途端、
まったく起きられなくなりました。
時計を見ると、もう10時。
それでも布団から出られない。
やっと「動こうかな」と思えるのは、12時ごろ。
着替える気力もなく、パジャマのまま一日が終わる。
外に出る理由も見つからず、気づけば夕方になっていました。
以前は当たり前にできていた、
「起きる」「着替える」「身支度をする」
そのひとつひとつが、
とても遠い作業に感じられていました。
身体の状態② ふいにやってくるフラッシュバック
何もしていないときに、
突然、胸がざわつくことがありました。
あのときの声。
あの場の空気。
責められていた感覚。
不意に、あの場面が頭の中によみがえり、
心臓がどくん、と大きく鳴る。
そのあともしばらく、落ち着かない状態が続きました。
気を紛らわせたくて、
漫画を読んだり、アニメを流したり。
とにかく時間を埋めて、
現実から少しでも離れていたいと思っていました。
でも——
威圧的なキャラクターが怒鳴るシーンを見ただけで、
動悸が始まってしまうこともありました。
「ただのアニメなのに」
そう思いながらも、
「この状況、あのときの自分と重なる…」
そんな感覚がよぎりました。
慌ててテレビを消して、深呼吸をする。
それでも、しばらく動悸はおさまりませんでした。
心と体が切り離されたような、
不思議で、少し怖い感覚でした。
心の状態① 不安と焦りで頭がパンパン
「休んでください」
病院の先生にそう言われました。
しかし正直、どう休めばいいのかがわかりませんでした。
仕事をしているときは、
常にやることがあって、考えごとでいっぱいで、
時間はあっという間に過ぎていきました。
でも、家にいる時間は違いました。
ゆったり、というよりも、ただ長い。
終わりの見えない一日のように感じていました。
「うつって、よくなるの?」
「どれくらい休んだら、また働けるようになるんだろう」
「私はどんどん社会から遅れていくんじゃないか」
考えなくてもいいはずのことが、勝手に浮かんできます。
焦りと、不安と、劣等感。
それらが頭の中をぐるぐる回り続ける。
休んでいるはずなのに、心はまったく休まっていませんでした。
早く元気になりたい。
前みたいに動けるようになりたい。
そう思えば思うほど、
目の前にある現状とのギャップに苦しみを感じていました。
心の状態② 将来を考えるのが怖い
朝は相変わらず起きられませんでしたが、
少しずつ、身体が回復に向かっていく感覚はありました。
以前より、少し眠れるようになった。
食事も、前よりは少しずつとれるようになった。
けれど——
そうした変化で、気持ちが軽くなるわけではありませんでした。
考える体力が、ほんの少し戻ってきたことで、
将来のことを考える余白が生まれてしまったのです。
仕事はどうするのか。
お金は大丈夫なのか。
結婚や家族のことは、どうなるのか。
次から次へと、現実的な不安が浮かんできます。
……
職場でうまくいかなかった自分にとって、
前向きな未来を思い描くことは、
とてもできる状態ではありませんでした。
少し元気になったからこそ、
現実の重さが、またはっきりと見えてしまう。
それが、思っていた以上にしんどかったのです。
心の状態③何もできない、そんな自分が嫌だった
焦る。
不安になる。
劣等感を感じる。
頭の中は、ずっとざわざわしていました。
でも——
だからといって、
何かを変えようとする気力は湧いてきませんでした。
改善しなきゃ。
動かなきゃ。
そう思うのに、体も心も、まったくついてこない。
朝は起きられず、
気づけばもうお昼。
ほとんど動いていないから、お腹も空かない。
何もしていないはずなのに、強い眠気に襲われて、また眠ってしまう。
そして、あっという間に夜が来る。
「今日も、何もできなかった」
そんな一日が、静かに積み重なっていきました。
漫画を読んで、
アニメを見て。
物語の世界に入り込んでいるあいだだけは、
自分のことを考えなくてすみました。
あの時間が、唯一の逃げ場だったのだと思います。
まとめ|動けなかった時間に、うまく向き合えなかった
あの頃の私は、
「何もできない自分」を、ずっと責め続けていました。
起きられないことも、
動けないことも、
不安ばかり考えてしまうことも。
どれも「よくないこと」だと思っていたのです。
でも今振り返ると、
あの時間は、ただ止まっていたわけではありませんでした。
動けなかったのではなく、
動かないように、心と体がブレーキをかけてくれていた。
前に進めなかったのではなく、
これ以上無理をしないために、立ち止まっていた。
当時は、そんなメッセージに
うまく向き合えていない時期だったと感じています。
次回は、「何もしない時間が、少しだけ必要だった」
というテーマで、
回復の途中の過程をお話ししようと思います。

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